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神社行ったので。



安っぽい光で照らされた煙が太い木のようになって黒い天へ昇っていく。神社の中の開けた場所で無数の人間に取り囲まれて山となった贄を燃やす炎はただただ赤く涎を垂らして私のほうを見ている。なんて汚い光景だろう。肌を刺激する熱と臭気が体を喰ってしまわぬうちに人垣を離れようと、軽い気持ちでやってきたことを後悔しながら振り向くが、そこにあるはずの姿がなくて驚いてしまった。どこに行ったのだろうときょろきょろ目玉を回しながら退路を断たんとする人の体を押しのけて炎の宴を出ようとしたけれど悪魔に目を奪われた人々は私を通さない。ああ私は炎に、あの灰色の醜い煙に、身を焦がされて死んでしまうのだ。贄などひとつも持ち合わせてはいないのに。炎に照らされた後頭部がじわじわと熱くなるのを感じ無性に不安になると突然、人垣に差し入れた腕をぐいと引っ張られ、私は弾き出されるように参拝客の群れから飛び出した。私を抱きとめた彼は泣き出しそうな私を不思議そうに見つめて、そろそろ行こう、と言った。そして私がうなずくと、持っていた小さな紙袋を中身が出ないよう折り曲げて、炎の中へ高々と放り投げた。人垣を越えてそれは山の頂上付近にぽとんと落ち、煙を揺らし、その体を炎が舐めるように侵していく。あなた信じているの?あれが悪魔じゃなくて神様だって?驚いた私が聞くと彼は恐ろしいくらいに柔らかく笑って私の頭を撫でて言うのだ。おまえ信じているの?あれが悪魔だとか神様だとかって?彼は炎に目を移す。ならうように私がもう一度それを振り返ると群衆から小さな機械を持った手がいくつもいくつも突きあげられていた。その一つ一つの小さな画面に炎の姿が褪せた色で覗いている。その手の上へ煙がもくもくと昇っていく。パシャパシャと音がする。私は不意に彼に手を握られて鳥肌が立ちそれを振り払った。炎はサーカスのピエロのように、初めから死んでいる贄の上で踊り狂っている。なんて汚い光景だろう。なんて汚い光景だろう。
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